雪と氷をまとったカラマツが山肌を覆う、白一色の単調な世界。対照的に、後方の槍ケ岳、穂高連峰など険しい雪山は、空の色と競うように青く輝いていた。
長野県松本、上田の2市と長和町にまたがる標高2千メートルの美ケ原高原は、360度の眺望が圧巻だ。東の秩父連峰、西に北アルプス、立山連峰、南は富士山や八ケ岳連峰、そして北には高妻山…。深田久弥が記した「日本百名山」の40近くを眺めることができる。
周囲に視界を遮る山がない高原には厳しい風が容赦なく吹き付ける。冬場、マイナス20度近くになることも珍しくない。この環境に美しい景色の秘密がある。
氷点下に冷え込んだ環境で、一帯を覆う霧が木々にぶつかると一瞬で凍り枝に付着する。くっついた細かい氷粒はまるで粉雪。「霧氷」だ。高原の森は霧氷で白く化粧されていく。同じように、霧より大きな雨のしずくが凍って枝に着くのが「雨氷」。今年の雨氷はこれまでにないほど、厚く重く、木々にまとわり着いているという。
「ビー玉のような大きさになった雨氷を見ました。氷の重さで倒れる木々も多いですね」。美ケ原山頂の「王ケ頭ホテル」に勤める三浦康栄さん(57)はこう証言する。例年に比べ積雪量は少ないが、その代わりに今年は吹き付ける雨が美しい景色を作り上げていた。
下界では春の気配を感じる時期だが、美ケ原はまだまだ冬。寒風吹き付ける厳しさは4月上旬まで続く。(写真報道局 大西正純)
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